株式会社グリッド(本社:東京都港区、代表取締役:曽我部完、以下「グリッド」)は、株式会社ツムラ(本社:東京都港区、代表取締役社長CEO:加藤照和、以下「ツムラ」)とAIを活用した漢方製造の原料となる「生薬の在庫最適化システム」の開発を完了し、2023年7月よりツムラにおける業務での運用を開始したことをお知らせいたします。

 ツムラグループでは129処方の漢方製剤を製造・販売しており、植物、動物、鉱物などの薬用部位を加工した119種類の原料生薬を用いております。漢方製剤は、多成分系複合製剤であり、品質管理のポイントは均質性です。天然物由来の素材である生薬は天候、産地、収穫時期などにより、品質や成分にばらつきがあります。  これまでツムラグループは漢方製剤の製造において、成分が常に一定になるように在庫の状況に応じて生薬の成分値を確認し、多様な制約条件の基で複雑な組み合わせから漢方製剤の均質化を実現するために、生薬調合指示を行っておりました。そのような状況に加え、生産拠点と生産量の増加、また需要の変化に迅速に対応するための生産計画変更などにより、適切な調合指示をするために在庫管理担当者の業務が増加するなど、標準化やシステム化による業務の自動化が強く求められておりました。  これらの課題に対応するため、ツムラグループは蓄積された高度な調合のノウハウと、グリッドの最適化AI技術を組み合わせることによる、生薬の在庫最適化システム開発を進めてまいりました。

<本システム概要>

 新システムは、ツムラグループが保有している全生薬在庫の成分データを取得し、1年以上先までの生産計画に対応する、最適で均質化された生薬調合指示を瞬時に行うことが可能です。これにより、生薬調合の精度および均質性の向上と、生薬在庫の最適化およびサプライチェーンの効率化を同時に達成することを可能としました。さらに、担当者の計画策定時間の大幅な短縮とノウハウの標準化を通じて、より効率的なオペレーションの展開が期待できます。

システムイメージ図

在庫推移シミュレーション

 長期の生産計画に基づき、生薬在庫を最も効率的に利用するための自動シミュレーションを行い、生薬管理群の利用比率を算出します。この技術を利用することで、各拠点の現在の在庫と将来の需要を元に、必要な生薬のバランスを保ちつつ最適な調合を実現できるようになります。結果として、すべての生薬の在庫が均等に、そして効率的に利用されることが期待されます。

生薬移送計画最適化

 在庫推移シミュレーションで得られた生薬管理群の使用比率をもとに、1年先の生産で必要とされる生薬の量や種類を特定し、国内外の在庫拠点から在庫移送計画を立案します。 従来、このような予測は多くの人手と時間を要して行ってきましたが、使用する生薬ロットまで特定することが困難でした。本システムによって、全生産拠点の1年先までの最適な在庫計画が15分程で立案可能となりました。

生薬調合指示最適化

 生産計画に基づき、各工場で製造するために必要な生薬調合指示を自動で立案します。生薬は天然物であるため、天候、産地などによって品質や成分にばらつきがありますが、ツムラ基準に合格した生薬のみを使用しても、成分にはなおばらつきが残ります。ツムラでは、生薬ロットごとの含有成分のデータを蓄積・管理し、生薬調合指示することにより最終製品である漢方製剤の均質性の確保に挑戦してきました。これまで1処方を3か月分製造するために必要な調合指示の策定時間を、従来の約4時間から数秒程度と大幅に短縮すると同時に、生薬調合の精度および均質性の向上も実現可能となりました。

 本システムの導入により、計画策定時間が大幅に短縮されるだけでなく、ノウハウの標準化とともに効率的なオペレーションが展開できるようになりました。それによって適切な在庫管理のもとで生産面でも大きなメリットをもたらし、効率的な生産も可能となるため、安定供給が実現されます。グリッドは、今後も最適化AI技術を用いて、社会を支える企業のDXを推進してまいります。

株式会社ツムラHP:https://www.tsumura.co.jp  

株式会社ツムラリリース: https://www.tsumura.co.jp/newsroom/item/20231013.pdf