株式会社グリッド(代表取締役社長:曽我部完、本社:東京都港区、以下:グリッド)は、国立大学法人電気通信大学(学長:田野俊一)と共同で進める「仮想発電所(VPP)需給調整におけるリスクヘッジ型量子古典確率最適化手法の開発」プロジェクトが、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のステージゲート審査を通過し、本格研究フェーズへ移行したことをお知らせいたします。
本プロジェクトでは、VPPの需給不確実性の最適化において、世界に先駆けてゲート方式の量子技術を応用し、古典コンピュータでは困難な膨大なシナリオ生成と最適化計算に挑戦しています。これにより、100万通りを超える需給シナリオを効率的に処理し、電力の安定供給とリスク抑制を両立する新たな手法を開発します。
2025年10月までに実施した初期仮説検証フェーズでは、量子技術を用いた確率分布生成やシナリオ予測の精度を高め、古典的な手法との比較を通じて最適化手法の有効性を確認することができました。これにより、実データに基づく需給調整への応用可能性が明らかになりました。こうした取り組みを経て、本格研究フェーズへの移行が決定しています。
今回の審査通過を経て、本格研究フェーズでは、量子生成モデルと変分最適化を統合した確率表現を高度化し、大規模な仮想発電所でも安定に機能するかを検証します。また、クラウド上の量子計算環境で装置の調整から実行まで一貫して検証し、精度・時間・コスト・成功率を指標に設定を最適化しつつ、実機検証を進めます。さらに、従来の厳密解法や近似解法、量子アニーリング、量子インスパイアード手法と提案手法を同条件でベンチマークし、計算時間と解の質の優位性を検証します。これにより、再生可能エネルギーの導入拡大に不可欠な需給調整の高度化を実現します。
本研究開発は、再生可能エネルギーの導入拡大に伴う需給不確実性という社会的課題に対し、量子技術と古典技術を融合した世界初の最適化手法を提示するものです。これにより、エネルギー需給の安定化、CO₂排出量削減、電力市場における効率的な取引促進といった社会的価値を実現することが期待されます。研究開発は、2027年3月末終了を予定しており、実用化開発フェーズを経て、2029年からの社会実装を目指します。
グリッドは、量子技術を社会に根付かせる挑戦を通じて、経済・産業分野での新たな価値創出を推進し、持続可能な社会基盤の構築に寄与してまいります。