Special Interview

四国電力

AIによる電力需給計画の最適化と自動化に向けた開発

Use Case

2023.03.12

四国電力では、グリッドが開発した電力需給計画立案システムを用いて運用を行っている。グリッドの持つAIの最適化技術と、仮想空間上に現実空間を再現するデジタルツイン技術を活用し、高精度な「電力需給計画の最適化システム」の実現を行った。 四国電力の担当者に、導入背景やグリッドのシステムを利用した効果、そして今後の狙いを聞いた。

小西 淳也様

総合企画室 需給運用部 需給統括グループ

古林 憲人様

総合企画室 需給運用部

業務内容

当社は四国地方をメインとした電力事業全般を行っております。我々が所属する需給運用部ではお客様の電気使用量や再エネの発電量予測を行った上で、火力や水力といった発電所の運転計画の立案や市場での電力取引などを行っております。

火力発電所での運転制御は24時間、365日体制で行われ電力の安定供給を実現している

導入背景

電力事業計画の立案には、電力需要、再エネ発電量、市場価格、この3つのパラメータを用いたシナリオを作り、そのシナリオをもとに火力や水力設備の発電計画を立案しています。しかし、シナリオは変動が大きく、またシナリオが必ずしも当たるわけではないので、ある程度の上振れ・下振れを想定したシナリオを作成する必要があります。そうすると、組み合わせが非常に膨大になる上に、シナリオごとに策定する発電計画も膨大になってしまいます。そのため、各発電計画を運転した際にかかるコストの評価を適切に行うことは大変難しく、グリッドのシステム導入前は、1パターンのシナリオを作るだけでも、人間の手ではかなりの時間を要していました。結果、様々な組み合わせに及ぶ複数のシナリオを作成し、更にそれを分析し、最経済な需給計画を立案することに限界が生じていました。こうした課題に対し、需給計画立案の最適化、高速化のために、AI知見を有するグリッドと、2020年12月から研究開発を開始し、2022年7月からシステム運用を開始しました。

グリッドに依頼した決めてはどのようなものになりますか?

本システムの開発は、AIに関する知識経験が必要不可欠となりますが、当社ではAIの導入実績が全くありませんでした。また、各種のAI企業がある中で、最適化計算に特化したAI知見を持っていて、なおかつインフラ企業への開発・導入実績を持っているグリッドとご縁があり、依頼することとしました。

様々な組み合わせに及ぶ複数のシナリオの作成・分析により、 最経済な需給計画を立案することに限界が生じていました/小西 淳也様

グリッドを評価してくださるポイントを教えてください。

グリッドは、ソフトの開発だけではなく、電力需給計画の立案という業務内容に関しても勉強され、開発プロセスにおいても、現場のニーズを捉えて痒いところまで手が届くという開発をされていたと思っています。また運用開始後も、実際に使用した上での改善案に対して、迅速に対応され、より良いシステムに進化していると思っています。

ReNom Powerでは、グラフィカルに複数のシナリオが表現される
ReNom Powerは、運用者が最適な計画を選択するための 指標として、計画立案の最適化に寄与しています

導入されたシステムについて教えてください。

今回導入したシステム(ReNom Power)は、AI最適化技術を用いた電力需給計画立案システムです。 システムは大きく分けて3つの機能から構成されています。 1つ目はシナリオ作成機能、2つ目は発電計画策定機能、最後は期待収益算定機能となります。 まず1つ目のシナリオ作成機能は、週間計画において想定される電力需要、気象情報、電力市場価格の入力データをインプットデータとしたシナリオを作成する機能です。 具体的にはReNom Powerの中では100個のシナリオを作成し、その中から10個のシナリオを厳選して提示します。最終的には、我々事業部において、その10個を2、3個までに絞り込み、使用しています。 2つ目の発電計画策定機能では、シナリオ作成機能で作成したシナリオに応じた、発電機の設備諸元や設備停止の停止情報などの制約条件を踏まえた発電計画を策定します。 3つ目の期待収益算定機能は、各シナリオに対応した最適な発電計画に対して、電力需要、市場価格、再エネ発電量が変動したときの期待収益をまず計算して、さらにその期待収益の振れ幅を含めて分析評価し、運用者に提示するものです。 現在、ReNom Powerは、運用者が最適な計画を選択するための指標として、計画立案の最適化に寄与しています。

週間計画1つ作成するのに数時間かけていたが、 複数の計画作成を半分以下の時間で実現

導入後の効果を教えてください。

導入後の運用面では、2つの効果を感じています。1つ目は経済性評価ができるようになったというところと、2つ目は業務の効率化が目に見えてできるようになったと思っています。まず1点目の経済性評価について、従来のオペレーションでは、1日における2点バランスという、需要に対して供給力が足りているかどうかの評価しかできていませんでした。しかし、Renom Powerを活用することによって、48点バランスという点ではなく線で評価できるようになりました。その結果、燃料の制約や予定される使用量が見えるようになり、さらに燃料の使用量に応じた経済性の評価ができるようになりました。2点目の業務効率化ですが、以前は週間計画を1つ作成するにあたっても数時間かけていましたが、Renom Powerを活用することによって、最初にデータをインプットすることで、複数シナリオを検討することができました。

週間計画をより実需給に近いところの 翌日の計画反映できるような活用を今後考えています / 古林 憲人様
48点バランスで経済性の評価が可能に

今後の活用について教えてください。

昨今、電力需給の逼迫や、燃料価格の高騰もあり、需給の状況が大きく変動しています。去年や、一昨年の実績が通用しないような世界になってきています。そうした中で、さらに新しい市場制度が増えてきているといった事情もあり、これらの状況も踏まえたシステムのアップデートをしていきたいと思っています。また、週間計画をより実需給に近いところの翌日の計画に反映できるような形で進めていきたいとも思っています。